あいうえおじゃまめこ

いろはにほへと

【く】黒(くろ)

【く】黒(くろ)


某ファッションセンター製品の黒で埋め尽くされたクローゼットを開く度に溜息をつく自分に気が付いたのは中学2年の終わり頃でした。小中学生は本来その製品で事足りるんでしょうけど、ある日手に取ってしまったゴスロリバイブルとKERA!が私を完全に変えてしまいまして。。。砂糖菓子を連想させるような繊細なフリルやレースに包まれて微笑むモデルの女の子はまるで人形のように可愛らしくて、でもどこか格好良さを感じるのでした。それに惹かれて「私も他の人と違う私になりたい!」とか、単純で中学生らしくて思い返すと微笑ましい…じゃなくて今も変わらず痛いコだったんだなあと思ってなかなかに辛い。いつもいつも決められたものや事に対してそのまま首を縦に振ることを辞める勇気を、決意をそこで貰ったのです。
適当に服を選んできた私に嫌悪を感じたし今まで何て無駄な時間を過ごしてきたんだろうと思わずにはいられませんでした。親が適当に選んできた服なんかに染まりたくない、そんなの絶対に嫌だ、その嫌悪からくる熱と勢いそのままにクローゼットの黒い服を片っ端から引っ張り出しました。私はとにかくダサくて安っぽくて、とにかく影に隠れて何とか生き延びられたら良いと思っていてそんな自分や環境が本当に、本当に大嫌いでした。袋に黒の服を詰めて、クローゼットから安い黒、無難な黒が消えたとき目を閉じて深呼吸すると燃えていく黒い服が思い浮かんで、そこでようやくお別れできたような気がしました。

その後暫くクローゼットからは黒は息を潜めて、私の性格にはまるで似合わないパステルカラーや優しい色のものが増えていきました。年を重ねて遠くに行って自分で何か。選べること探せること、自分の好きだと思うものを少しずつでも買えることにこの上ない喜びを覚えています。

そして最近の私のクローゼットの中身ですが、また喪服色に戻りつつあります。何だかよく分かりませんが無意識のうちに手が黒を選んでしまっているんです。でも今度の黒は自分が選んだ色です。きっとまだ反発したいし、まだ染まりたくないんです。きっと私の黒歴史は繰り返されて、まだまだ続きます。